視界全部が凄すぎて働くのをやめたがる脳内CPU
三つの宗教の聖地が集まっている、ユネスコ世界最強遺産「エルサレム旧市街と城壁群」。
国連の管轄である…なんて迂闊に言うともう速攻で「ここはイスラエル!」とイスラエル人にガチギレされるセンシティヴな区域ネ。
でも実際、正式には国連の…(昨今の情勢ではよりメンドクサいのでよす)。クリミアでも南樺太でも体験した「教科書にない!」状態の典型。
テレビの仕事で、旧市街を取り囲む城壁に数ある門(閉まってるの入れて11個)をそれぞれ取材。
このエリア、観るもの全てが東アジア人の想像の何段か上を行っているため、ただでさえ劣化し始めた脳のCPUがオーバークロック。
1週間もいるとだんだん凄さに着いていけなくなりボンヤリしだすのが怖い。
「キリストが処刑に向かう途中膝ついた所がここです」とか、そんなことばっか言われてんだもん、終始。
噛んで含める様にわかりやすく“史実”をガイドされても、「すいません。それは人類の何について話されているのですか?」状態がずっと続くユダヤ人街の取材を終えて「シオン門」から城外に出る。
業務が終わってもソコは「シオンの丘」だもん。狂うよね。
別にユダヤ人にゆかりもないしシンパシーも特段感じないはずの俺だが、この時はなぜか突然ひらめくものがあった。
おそらく脳内の大事な部分がほぼ麻痺ってたから別の道筋が開いちゃったのだろう。
いわゆるスピね。

ロケスケに無かったけど、迷いなく寄らせてもらった。同行者には迷惑だったかもしれないが、滅多に来られないゲンバだったので、罪悪感も後悔もなし
「ねえ、スピルバーグのアレの、ラストのアレってこの辺じゃなかったっけ?」
何の考えもなくつい口に出たんだけど。スピだけにスピルバ……。
あの超大作の、観た人なら一生忘れない謎のエンディング。で、ありながら「これ以外の収め方ないかもね」と思わせるド迫力の(ズルい)ドキュメンタリー部分。
いわゆる「シンドラーのリスト」によって虐殺を逃れ、終戦で解放されたユダヤ人たちの行進にディゾッていきなり画面がカラーに転換、現在(撮影当時)のマジ生存者や子孫が出てくるってアレね。
オスカー・シンドラー自身は終戦後不遇だったようだが、生き残ったユダヤ人のおかげで最期エルサレムに招かれ、遺言通りこの地に埋葬された…みたいな逸話をどこで覚えていたのだろうか、俺は。
「え?アレってポーランドの話だったでしょ?」みたいなスタッフを尻目に地図を探ればホラ!絶対この辺だって!
ロケ車を待っている間に「私が来るのが5分遅かったらどうなっていた?」の名場面がフラッシュバックし(嘘つけ)いてもたってもいられず(迷惑だから大人しくしとけよ)、「ロケ車が来る5分の間に探してくる」っつって数十メートル。
「ホントにあった!」
『エルサレム・マウントシオン墓地』。門にガッツリ「To OSKAR SCHINDLER’s Grave」の看板が。
そんな偶然で聖地を見つけて運を使い果たしたからだろうか、この時はゲートが施錠されており、門前に車まで停められていて中には入れず。
あのみんなが石積んでたお墓には辿り着けなかった(めっちゃ外から覗いたけど見えんかった)。
D.C.での「エクソシスト・ステップ」の時もそうだったけど、そういう雑知識って忘れているようでもフッと頭に降りてくる時があるので、即座にキャッチできるようにアンテナの感度を調整しておきたいものだ、と改めて思うね。
見逃せないゲンバってそぐソコにあって、大概あんまりしょっちゅう行ける場所じゃないから。
外務省や『世界の歩き方』に「あんま行くな」と言われているようなところが好きな諸兄にとっては尚更で、コレって危険を察知する能力とかなり近いものだと思うので推奨。
◉野磁馬



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